知人からQSYしていただいたA-40用ダウンコンバータ(マキ電機GRX2402D(図1.1))とアップコンバータを組み合わせてトランスバータとしてくみ上げる。今回のアプローチは極めて変則的なものであるが,資源の有効利用を優先して取組んだ。
1.受信部製作
GRX2402は入力周波数2400-2402 MHzに対して出力は146-148 MHzに設定されている。これを2424 MHz(CW運用周波数)-2427 MHz(呼出周波数)-2428 MHz(実験運用周波数)で使用するとすれば,170-173-174 MHzに落ちてくる。
局発Xtalをデフォルトの 56.4 MHzから57.0 MHzに交換することで144-147-148 MHzとすることが可能となる。あるいは,呼出周波数2427 MHzを144 MHzに落とし,実験周波数で運用することを想定した場合には57.075MHzとする。
Xtal交換前のダウンコンバータの変換利得を表1.1に示す。RF入力レベルは-56 dBmでの測定値である。(RFin=-46 dBm〜-96
dBmの範囲においてIFoutは直線的に変化することが確認された。)
144 MHz帯7K(3段)BPFをショートしたときの特性を表1.2に示す。
次に,Xtalを56.4 MHzから57.00 MHzに交換した。
そのときの変換利得の測定結果を表1.3に示す。RF: 2427(2425) MHz,LO: 2280 MHz,IF: 147(145) MHzのときの特性である。
表1.1 Xtal交換前の変換利得
RF
(MHz) |
IF
(MHz |
IFout
(dBm) |
変換利得
(dB) |
備考 |
| 2395 |
139 |
-39 |
17 |
|
| 2400 |
144 |
-28 |
28 |
|
| 2401 |
145 |
-28 |
28 |
|
| 2402 |
146 |
-28 |
28 |
|
| 2405 |
149 |
-34 |
22 |
|
| 2410 |
154 |
-49 |
7 |
|
| 2415 |
159 |
-59 |
-3 |
|
| 2424 |
168 |
-62 |
-3 |
|
| 2427 |
171 |
-71 |
-15 |
|
※RFin = -56 dBmのときの値
表1.2 Xtal交換前(BPFスルー)の変換利得
RF
(MHz) |
IF
(MHz |
IFout
(dBm) |
変換利得
(dB) |
備考 |
| 2395 |
139 |
-26 |
12 |
|
| 2400 |
144 |
-36 |
16 |
|
| 2401 |
145 |
-37 |
16 |
|
| 2402 |
146 |
-32 |
20 |
|
| 2405 |
149 |
-27 |
26 |
|
| 2410 |
154 |
-50.2 |
2,8 |
|
| 2415 |
159 |
-53 |
0 |
|
| 2420 |
164 |
-61 |
-8 |
|
| 2424 |
168 |
-51 |
2 |
|
| 2427 |
171 |
-50.4 |
2.6 |
|
※RFin = -53 dBmのときの値
表1.3 Xtal交換後の変換利得
RF
(MHz) |
IF
(MHz |
IFout
(dBm) |
変換利得
(dB) |
備考 |
| 2395 |
|
|
|
|
| 2400 |
|
|
|
|
| 2401 |
|
|
|
|
| 2402 |
|
|
|
|
| 2405 |
|
|
|
|
| 2410 |
|
|
|
|
| 2415 |
|
|
|
|
| 2424 |
|
|
|
|
| 2427 |
|
|
|
|
※RFin = -56dBmのときの値
最終的には,145MHz帯のメインIF出力と,1200MHz帯のサブIF出力を取り出すこととする。
2400 MHzのLNAケースの蓋がないのでこれを作る。本来は真鍮で作成すべきであるが,手持材料の都合で0.5tアルミとした。所定のサイズにシャーリングマシンで切断,ついで折り曲げた後,取付穴を開けて取り付けを完了した。(図1.2)
2.送信部製作
コスモウェーブの4ch発振器をローカルとして利用することとする。発振周波数1145 MHzとしたとき,親機周波数1282MHzとすることで呼出周波数で電波が出せる。
そのため,手持部品やJA0DFR浅妻OMからQSYしていただいたBPF・サーキュレータを利用して,ともかく所定の出力が出るようにくみ上げることとした。
トリプルバランストミキサ(WJ: M2TC)のLocal入力+4.5 dBmとして,IF入力に対するRF出力を測定し,2427 MHzにおける変換利得を調べた。Local入力端子にはマッチングのために3
dBのATTを入れた。これを入れなくても変換特性は殆ど変化なし。IF端子にはSG (Kenwood SG-7130)からCW信号を入力し,RF出力はスペアナ(アジレントE4403B)で観測した。 このコンポーネントは,適用周波数範囲での変換利得-9dB程度,
最大入力 +25dBm@25℃/+4dBm@100℃である。今回使用したものは若干損失が大きいようだ。
表2.1 ミキサの変換利得
IFin
(dBm) |
RFout
(dBm) |
変換利得
(dB) |
備考 |
| -46 |
-54 |
-8 |
|
| -36 |
-45.2 |
-9.2 |
|
| -26 |
-36.8 |
-10.8 |
|
| -16 |
-27.1 |
-11.1 |
|
| -6 |
-17.1 |
-11.1 |
|
| -1 |
-12 |
-11 |
|
| 4 |
-7 |
-11 |
|
| 7 |
-4 |
-11 |
|
| 18.4 |
-0.67 |
-19 |
|
BPFの伝達特性と挿入損失を測定した。図2.1が通過特性である。通過帯域幅はそこそこ広いようである。また,おおよその挿入損失は2.4 dBである。これらの値が妥当なものかどうかは分からないが,他に手段がないのでコレで行くこととした。
ミキサ出力を図2.2(a)に,BPFを接続したときの出力を図2.2(b)に示す。2427MHzの所望信号のみが得られている。

図2.1 BPF通過帯域特性

図2.2(a) ミキサ出力

図2.2(b) BPF出力
次に,ローパワアンプ(ミニサーキット: ZJL-3G)の入出力特性を調べた。といっても,多分こんな感じならいけるのではという極めてテキトーに接続(図3.2)した状態での特性である。直線領域で動作しているようである。
ZJL-3Gは利得19 dB,絶対最大入力は+13 dBmである。
2400MHz TRX_Block222.pdf へのリンク
表2.1 送信部各点でのレベル
Pin
(dBm) |
ATTout
(dBm) |
MIxout
(dBm) |
BPFout
(dBm) |
AMPout
(dBm) |
ATTout
(dBm) |
PAout
(dBm) |
| -50 |
-56 |
|
|
-51.5 |
-56.5 |
-22 |
| -40 |
-46 |
-54 |
|
-42 |
-47 |
-11 |
| -30 |
-36 |
-45.2 |
-47.2 |
-32.2 |
-37.2 |
-1.8 |
| -20 |
-26 |
-36.8 |
-38.5 |
-23 |
-28 |
7.3 |
| -10 |
-16 |
-27.1 |
-29 |
-12.9 |
-17.9 |
16.9 |
| 0 |
-6 |
-17.1 |
-19 |
-3.2 |
-8.2 |
26.5 |
| 5 |
-1 |
-12 |
-13.9 |
2 |
-3 |
31.3 |
| 6 |
0 |
-11 |
-13 |
3 |
-2 |
31.9 |
| 7 |
1 |
-10 |
-12 |
4 |
-1 |
32.6 |
| 8 |
2 |
-9 |
-11 |
4.8 |
-0.2 |
33.3 |
| 9 |
3 |
-8 |
-10.1 |
5.7 |
0.7 |
34.3 |
| 10 |
4 |
-7 |
-9.2 |
6.6 |
1.6 |
34.7 |
| 11 |
5 |
-6 |
-8.3 |
7.45 |
2.45 |
35 |
| 12 |
6 |
-5 |
-7.4 |
8.15 |
3.15 |
35.1 |
| 13 |
7 |
-4 |
-6.6 |
8.74 |
3.74 |
35.2 |
| 24.4 |
18.4 |
-0.67 |
-3 |
8.8 |
3.8 |
35.25 |
※Pinはミキサ前に挿入した6 dB ATTの前段での値である。また,24.4 dBmはハンディトランシーバDJ-G7(充電池使用ローパワー)接続時の値である。
※コスモウェーブのPAの最
大入力は 5 mW (+7 dBm)であるが,1 mW (0dBm)以内とすることが推奨されている。このため,Pin=+11 dB以上は避けなければならない。なお,推奨動作電圧は13.8Vとあるが,使用可能電圧範囲内の12Vとする。
※PAはかなり発熱するため,相応の放熱対策が必要である。
ハンディトランシーバDJ-G7(充電池使用ローパワー)接続時に,Pin=+10dBm以内に抑えるためには,入力端にさらに15dBのアテネータを挿入しなければならない。
一方,ZJL-3Gと,その出力に挿入した5 dB ATTをスルーにしたときは,+24.4 dBmを入力しても終段PA入力 -3 dBm,PA出力
+29.7 dBm となり過大入力とはならない。従って,可能ならばこのオプションのもとでの運用が望ましい。このとき,入力に挿入した6 dBのアテネータを3dBに変更することで,PA出力は33
dBm(= 2 W)とすることができる。
DC12 V供給時,送信部の消費電流は,ZJL-3G AMP/Local発振器0.09A,これにPAを追加したとき1.25A程度となった。(PA規格表によれば,13.8
V動作時の消費電流は Aである。)
3.送受切替部製作
最も簡単な方法は手動による切替であるが,できるかぎり自動切換にしたい。キャリコンユニットは購入または自作で対応することとなる。(最終的には,時間をお金で買うことになった。)
キャリコンの制御出力を用いて送受切替スイッチのオン・オフを行う。アンテナ側(RF)は同軸リレーを採用、受信側(IF)は適当なリレーでやってみることにした。素人の仕事と笑われることを覚悟でやってみる。
アイソレータは入れなくてもよいかも。
4.ケース収納
電源部を含めてアルミケースに収める。PAがかなり発熱するが冷却ファンは必要か?
ケース収納のための配置を検討した。ケース内部にシャシを置き、上部に送信部,下部に受信機を置くこととした。想定ケース(タカチ:US-160H)と同一サイズの方眼紙を用意して,取付位置を考える。(図4.1)
インナシャシは,フライス盤とボール盤で対応した。皿ネジも複数個所使用しなければならないが,通常のドリルで皿穴をあけるのは結構難しい。(図4.2)
ドリル穴の開いたシャシ上に部品を置いてみると,うまく行っていないところが沢山あり手直しが必要である。しっかりと採寸したはずなのに困ったものだ。素人の仕事はこんなものだと諦めて作業に入る。

図4.2 インナーシャシ |
 ケース前面
(SMA取付穴がバラバラ) |
 ケース背面
(これはうまく行ったかも) |
|
|
|

GRX2402Dユニット取付状況 |

GRX2402Dから取出したユニット |
|

インナシャシの上面(送信部) |

インナシャシの下面(受信部) |
最終的な収納状況 |
使用部品一覧表
| 部品 |
メーカ |
型番 |
価格 |
調達先 |
| Xtal |
|
57.0MHz |
0.25k |
サトー電気 |
| 局発PLL |
コスモウェーブ |
112,1135,1145,1150MHz 4ch発振器 |
15k |
直販 |
| PA |
コスモウェーブ |
PW1925D-3W |
21k |
直販 |
| キャリコン |
コスモウェーブ |
CR-03 |
3.8k |
直販 |
| ミキサ |
WJ |
M2TC |
|
|
| アンプ |
ミニサーキット |
ZJL-3G |
$115 |
|
| BPF |
|
4段インタデジタル
|
|
JA0DFR
|
| サーキュレータ |
TDK |
CU12M |
|
JA0DFR |
| 同軸スイッチ |
Transco |
82152-919C72400-1 |
3k |
マイクロウェーブミーティング |
| 同軸スイッチ |
ヒロセ |
HCS2-110-F |
|
|
| 固定同軸ATT |
HP |
8493A (6dB) |
|
|
| 固定同軸ATT |
NEC |
1015762 (5dB) |
|
|
| 固定同軸ATT |
Spectra |
MOD20600-3 (3dB) |
|
|
| スタンバイSW |
MAX |
AS-24L244 |
|
|
| LED(赤/緑) |
豊田電子 |
SLP-751H |
0.15k |
秋月電子 |
| 電源スイッチ |
NKK
MAX
サトーパーツ |
ロッカスイッチJW-S11RKK
トグルスイッチMS174122185
トグルスイッチSW-80 |
|
使用したのはトグルスイッチ |
| 電源コネクタ |
サトーパーツ |
CN-90-J4P |
0.2k |
メス(パネル取付) |
| 電源コネクタ |
サトーパーツ |
CN-90-YP-4P |
0.6k |
オス |
| ケース |
タカチ |
US-160H |
3.9k |
アマゾン |